(1)ダイバーシティ・マネジメントと障害者雇用
企業が持続可能な成長を目指すうえで重要視されていることの一つにダイバーシティ・マネジメントがあります。ダイバーシティ・マネジメントとは、持続的成長に向けて、人材の多様性を活かして事業を成長させ、組織を強化しようとする戦略です。女性活躍、外国人雇用、高齢者雇用、障害者雇用、治療と仕事の両立など取組むテーマは様々ですが、すでに多くの企業が取り組んでいます。持続可能な成長を目指す企業は、ダイバーシティ・マネジメントをコストとして捉えるのではなく、成長への戦略として描いています。
私たちSDMS実行委員会としては、人材のダイバーシティにある様々なテーマの中から、多くの企業が抱えている課題の障害者雇用における「法定雇用率遵守」に対して、特に精神障害者雇用に課題を抱えている状況であることから、民間福祉が中心となったコンソーシアム「SDMS実行委員会」を組成し、精神障害者雇用に特化したダイバーシティ・マネジメントの啓蒙や普及に取り組んでいます。
※SDMSとは、「精神障害(S)のためのダイバーシティ(D)・マネジメント(M)SELECTION(S)」の頭文字をとった名称です。
(2)障害者雇用の現状
2021年6月、厚生労働省の調査の結果、障害者法定雇用率を充足している企業の割合は47%、対前年比で1.6ポイント低下しています。さらに、障害者雇用を全くしていない(雇用者数0人)企業は、未充足の企業のうちの約6割を占めています。一方で、実雇用率は年々増加しており、2.15%から2.2%に上昇していることから、障害者雇用は全体的には進んでいます。
2021年3月に法定雇用率が2.2%から2.3%に上昇したことによって、従業員43.5人以上雇用している企業が対象となり、法定雇用率遵守の対象企業は増加していることを踏まえると、できる企業は雇用を増やし、できない企業ができないままでいる。障害者雇用は企業群を二極化しているのです。
そして、雇用者という点は、身体障害者は359,067.5人(対前年比0.8%増)、知的障害者は140,665.0人(同4.8%増)、精神障害者は98,053.5人(同11.4%増)と、いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きくなっていますが、数は最も少ない状況です。新規求職者数は、精神障害者が多く占めており、障害者雇用を進めうえでは、精神障害者雇用が求められているのです。
しかし、精神障害者雇用には企業に3つの困難があると言われています。①行動対応の困難(職場内外での人間関係のトラブル)、②雇用管理の困難(通院や服薬なので体調管理、障害に応じた労働条件の調整)、③職務遂行の困難(採用・配置しても、作業効率など期待通りに発揮できない)、以上3つの困難は、企業にとって重い課題となっています。(参考:高齢・障がい・求職者雇用支援機構 『特集●障がい者雇用の変化と法政策・職場の課題』2017)
以上のデータや研究から、企業が障害者雇用を進めるうえで、精神障害者雇用ができるかどうかがキーポイントになっているのです。
(3)今回のシンポジウム
2021年10月20日、私たちは、精神障害者雇用で一定の成果を上げられている企業を認定・表彰する制度「第2回精神障害のためのダイバーシティ・マネジメントSELECTION」を開催し、4社を優秀事業所として認定させていただきました。
精神障害者雇用ができる企業は、いったい何が違うでしょうか。
今回のシンポジウムでは、優秀事業所4社のご協力をいただき、それぞれの取組みやノウハウを多くの企業に伝えることで、広島県の障害者雇用を活性化させることを目指します。
また、「精神障害」というものに対する偏見や誤解を少しでも無くしていくために、草津病院精神科副院長の藤田康孝氏をお招きして基調講演をしていただきます。
さらには、具体的な雇用の手順を学ぶために、障害者雇用のノウハウを持つLITALICOパートナーズが講師となって、ワークショップを開催します。
障害者雇用に課題がある企業の皆さまに、優秀事業所の取組みを知ることができる貴重な機会と考えています。ぜひともこの機会をお見逃し無いよう、奮ってご参加いただければと思います。
医療法人社団更生会 草津病院 精神科副院長 藤田康孝氏
精神障害に対する医療の現状
~就労することの治療的な役割について~
SDMS2021優秀事業所が決定しました!4事業所が認定です!